オシムのトレーニング
東アジア4カ国によるE-1サッカー選手権が7月19日(火)から開幕する。カタールワールドカップに向けて、国内組のアピールの場となり、森保JAPANに何人の選手が入ってくるのか気になる大会である。残念ながら、我がアビスパ福岡からは誰も選出されなかった。年齢の部分もあると思うが、前、山岸あたりは選ばれても良かったと個人的には思う。
話が逸れた。現日本代表監督の森保さんは、どこまで選手たちに原則を与えているのか、戦術の引き出しをどこまで持っているのか、本当に選手任せなのかと何かとマイナスのことが話題になる。本番に向けて、しっかり準備できるのかただただ不安が募るばかりである。もし、オシム監督が今の代表を率いていたとしたら…
思い出補正もあるが、オシムジャパンに心躍ったことを覚えている。完成形が見れずに終わってしまったことが本当に残念であった。監督としてだけでなく、人としても魅力的だったイビチャ・オシム。発売される関連本はほぼ購入していたと思う。
2022年5月1日。ジェフで3年半、日本で1年4ヶ月指揮を執った知将が80歳でこの世を去った。
2007年 アジアカップ オーストラリア戦前のミーティング。
「今日お前たちが負けたら、トラウマを抱えることになって、この先10年、オーストラリアに勝てなくなるぞ。だから絶対に勝たなきゃいけない。」
「指示はいっぱい与えてきた。それが知恵だ。勇気だけで突っ込んでも勝てない。知恵と勇気の両方を持って行くぞ!」
中村憲剛と鈴木啓太の対談で紹介されていた「知恵と勇気」に関するオシムのエピソードの1つである。
オシムの言葉は多くの人々を魅了した。いわゆるオシム語録である。
「選手は小さな子どもと同じで、信頼されていないと思えば不安になる。」
「人に自分の望むことを伝えるには多くの時間がかかる。選手がそれを認めたときには、仕事はずっとやりやすくなる。」
「走るために走るのでは意味がない。芸術のための芸術と同じで、何の役にも立たない。」
「ミスをする権利があることも教えるべきだ。というのもミスを犯すことなしに生きてはいけないからだ。」
サッカーコーチとして、子どもたちに声をかける機会が多くある中で、指導者として非常に参考になる言葉ばかりである。
「考えて走る」サッカーとは?
イビチャ・オシムが監督となって、有名になった言葉の1つ「考えて走る」というフレーズ。具体的にどういうことなのか分かりやすくまとめている書籍が「オシムのトレーニング」である。
「考えて走る」サッカーとは?
◯ 何を「考える」?
・どうすれば味方が有利になるのか
→チャンスを作れるか、チームメイトが助かるか、プレーしやすいか。
・どうすれば相手がやりにくいか
→弱点は何か、長所は何か。
◯ しかし、「考えながら」では遅いこともある
・現代サッカーでは、”時間”も”スペース”も限られている
→ボールが来てから考えるのでは遅い。いつも2つ以上のアイデアを、あらかじめ考えておく。
・本番(試合)の準備のために、トレーニングする
→自分たちのプレーの種類を増やす。スピードと正確性、コンビネーションが重要。理想は、オートマティズム=自動的にみんなの意図が一致すること。プレースピードが速くなることに繋がる。また、どんな選手がいるか、どんなタイプの戦術なのか、相手に対する対策を考えておくことも大切。
◯ それならば、どうやって「考える」?
・普段から「考える」習慣を身につける
→何のためのトレーニングなのか「考える」。また、どうすれば味方はやりやすく、相手がやりにくいかを「考える」。そして、もっと良いアイデアや解決策はないだろうか、いつも考える。
・コーチやチームメイトと話し合う
→他人の意見を理解し、自分ならどうするか考え、意見を述べる
◯ 「アイデア」はどこから生まれる?
・うまい人のプレーを見る、真似をする
・失敗は成功のもと、トライしないことが最大の失敗
・自分以外の立場になって想像してみる
簡単にまとめてみたが、考える+走るの「走る」を1度切り離した方がイメージしやすい。キーとなるのは、考えながらじゃ遅い、ということ。反射的に体が動く、多くのアイデアが本番でも生まれるようなトレーニングを日頃からしなくてはならない。試合中に考えていない、これまでの経験、引き出しから反射的に体が動くと、チャビも何かで言っていた気がするが、オシムも結局は同じようなことを言っていたのではないかと思った。試合中に考える必要がないように、日頃のトレーニングから考える習慣を作っていく。
参考にした書籍は、日本代表監督を務めていた時の具体的なトレーニングも多数収録されている良書である。オシム関連本で1番人に薦めたい内容である。